東京地方裁判所 平成9年(行ウ)91号 判決
原告
株式会社共同債権買取機構(X)
右代表者代表取締役
井上皓介
右訴訟代理人弁護士
篠崎芳明
同
小川秀次
同
金森浩児
同
小川幸三
同
小見山大
同
寺嶌毅一郎
被告
東京都知事(Y) 青島幸男
右指定代理人
江原勲
同
松田英智
同
矢野照雄
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 争点1(本件差押処分の一部の取消しを求める訴えは、審査請求等の不服申立てに対する裁決等を経ていないことから不適法なものとなるか否か)について
法一九条の一二によれば、法一九条に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての異議申立て又は審査請求に対する決定又は裁決を経た後でなければ、提起することができないとされているところ、被告がした本件差押処分は、法一九条二号に規定する滞納処分に該当し、行政不服審査法に基づき被告に対する異議申立てができるものであるから、その取消訴訟を提起するためには、右異議申立てに対する被告の決定を経なくてはならないと解される。
被告が、平成九年一月二一日、原告に対し、本件差押処分をした旨を本件交付要求書の欄外に記載した交付要求書を配達記録郵便をもって送付したこと、法二〇条四項により、右交付要求書は、通常到達すべきであった時である同月二三日に原告に到達したものと推定されることは、前記第二の一8記載のとおりであり、原告は、本件差押処分があったことを遅くとも同日までには知ったものと推定されるところ、弁論の全趣旨によれば、原告は、本件差押処分について不服があれば、行政不服審査法に基づき本件差押処分があったことを知った右の日の翌日から起算して六〇日以内に被告に対し異議申立てをすることができたにもかかわらず、右期間内に、本件差押処分について右異議申立てを行わなかったことが認められる。
そうすると、原告は、本件差押処分について、右異議申立てに対する決定を経ていないことになるから、行政事件訴訟法八条一項ただし書により、本件訴えのうち本件差押処分の一部の取消しを求める部分は、不適法なものというべきである。
なお、原告は、仮に、地方税の徴収権の時効消滅を理由として配当について異議を申し立てるためには差押処分が取り消されることが必要であると解するのであれば、差押処分の取消しの訴えを提起するに先立ち行政不服審査法による不服申立てを経ることを必要としないと解すべきである旨主張する。
しかしながら、差押処分は、有効に確定した地方団体の徴収債権の存在を前提とするところ、仮に、原告の主張するように、本件滞納徴収金債権が時効により消滅しているとすれば、そもそも本件差押処分は存在しない徴収債権についてされたものとして無効となるというべきであり、右の場合には、原告は、本件差押処分の取消しを求めるまでもなく、配当異議訴訟においてその無効を主張し得るのである。原告の主張は、その前提を欠き失当である。
二 争点2(本件交付要求は、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たるか否か)について
取消訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法三条二項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
法の規定による交付要求は、滞納者の財産につき、地方団体が自らの手で滞納処分を執行することなく、その滞納者の財産に対して既に強制執行・滞納処分等の強制換価手続が開始されている場合に、その執行機関に対し、換価代金の中から滞納に係る地方団体の徴収金に充てる金銭の交付を求める手続であって、民事執行法上の配当要求(同法一五四条等)と類似の性格を有するものである。すなわち、交付要求は、有効に確定した地方団体の徴収金債権が存在することを前提に、強制換価手続の執行機関にその債権についてその弁済を求める申立てにすぎず、交付要求によって新たに権利義務は発生せず、何ら国民の権利義務に影響を与える行為ではない。したがって、交付要求は、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には当たらないというべきである(最高裁昭和五八年(行ツ)第一〇号昭和五九年三月二九日第一小法廷判決・裁判集民事一四一号五二三頁参照)。
なお、原告は、仮に、地方税の徴収権の時効消滅を理由として配当について異議を申し立てるためには交付要求が取り消されることが必要であると解するのであれば、交付要求は「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するとみるべきである旨主張するが、交付要求は、右にみたとおり公定力を生ずる性質の行為ではないから、本件滞納徴収金債権が時効により消滅している場合には、原告は、本件交付要求の取消しを求めるまでもなく、配当異議事件において右時効消滅を主張して交付要求の効力を争うことができるものである。原告の主張は、その前提を欠き失当である。
そうすると、本件訴えのうち本件交付要求の一部の取消しを求める部分は不適法なものというべきである。
三 結語
以上の次第で、本件訴えは不適法というべきであるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)